のと爺の古事記散歩

古希+4歳になってしまった爺さんが勝手気ままに古事記を散歩します。

古事記の神様と神社(7)

 

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 豊玉毘売命と豊玉姫神社

 前回、コノハナの壮絶なお産の話をしましたが、生まれた子のうち、ホデリが海幸、ホオリが山幸として成長します。しかし、この二人がまたドラマを作っていくことになるのです。
 ある日、二人はお互いの獲物を捕る道具を交換して使ってみようということになったのです。しかし、ホオリは兄から借りた釣り針を使っても一匹の魚も捕れず、あげくにはその釣り針を海中になくしてしまうのです。怒ったホデリはホオリがいくら謝り、代替品を出しても一切受け取らず、もとの針でなければダメヨ、ダメダメェ~と突っぱねます。
 困り果てたホオリが海辺で泣いていると塩椎神(シオツチカミ 潮流を司る神)が現れて事情を聞きます。そして、小舟にホオリを乗せると「この潮流に乗っていけば綿津見神(ワタツミノカミ 海の神)の宮殿に着きますねん。そしたら入口近くに桂の木があるさかい、その木の上で待っててや。海の神の娘が助けてくれまっせ!」と言うのです。やがて宮殿に着き、言われたとおりに木の上で待っていると神の娘の下女が現れ、豊玉毘売(トヨタマヒメ)と綿津見神に会うことになります。この時、毘売の方がホオリに一目惚れしてしまうんですね。綿津見神はホオリを歓待し娘と結婚させます。

 やがて時は流れてはや三年、ホオリはやっと宮殿に来た経緯を話すのです。「もっとはよ言わんかい!」綿津見神はすぐに海の魚の全てを集め、鯛の喉にひっかっかている釣り針を発見します。そして、ホデリ対策を伝授し、塩盈珠(しおみちのたま)と塩乾珠(しおひのたま)を授け、一尋和邇(ひとひろわに)にホオリを乗せて送り出します。

 こうしてホオリは何もかも綿津見神の言うとおりにしてホデリに釣り針を返し、結局ホデリはホオリに従うことになるのです。めでたし、めでたし、チャンチャン。 とは
いかなかったのです。これからが本当の修羅場が訪れるのです。恐いですよぉ~。

 さて、しばらくしてホオリの元にトヨタマヒメがやって来ます。
「私、妊娠してます。でも産むときのことを考えると天つ神の御子を海で産むわけにはいきません。ほんでもってやって来たんよ。」
 直ちに海辺に産屋が作られます。ところが、まだ産屋の屋根を鵜の羽で葺き終わらないうちに産気づいちゃったんです。うぅ、うまれるぅ~。それで産屋に入るときホオリにこう言ったんです。「私は今、本来の姿になって子を産もうとしています。お願いだから産屋の中を見ないでね!絶対見ちゃイヤよ~。」
 前にも言いましたね、見るなと言われて見ない男は120%いません。ホオリも当然、見ちゃったんです。そしたら、産屋の中で産気づいて唸っていたのは大きな和邇(わに)だったんです。和邇といってもクロコダイルではなく、サメですね。これを見てホオリは驚き恐れ、逃げ出しちゃったんです。全く、男というヤツは肝心なときにいつもこういう体たらくなんですね。
 本来の姿を見られたトヨタマヒメは心に恥ずかしく思い、産まれた御子をその場に置き、海と葦原中国との境の道を塞いで海の国へ帰って行ってしまいました。えぇ~っ、それって育児放棄か? いや、そうじゃないんですね。とてもいい加減なヤツですが、ニニギは天つ神であり、その子も天つ神の血筋を持つことになります。天つ神を海の国(異界)へ連れて行くことはできない、という悲しい母心なんです。国の境の道を塞いだのもそんな気持からなんですね。分かってやって下さい。 この御子には「天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(あまつひたかひこなぎさたけうかやふきあえずのみこと)」というとんでもなく長い名前がつけられました。

 このトヨタマヒメを祀るのが豊玉姫神社です。トヨタマヒメは、海の神の霊力とホオリのもつ山の神の霊力とを媒介する役割を果たしていると考えられ、子宝、子育て、安産守護の神として信仰されています。

 実は、この話には続きがありますが、それは次回にしましょう。
ではでは今回はここまで。次回をお楽しみに!!


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