イザナギは、無謀にもイザナミを連れ戻そうと黄泉の国へ向かいます。
「カァちゃん待っててちょっ、今、迎えに行くでよ!」
さぁ、果たしてイザナギの運命やいかにーーー。そして、イザナミは?
その前に、黄泉の国とはどんな国なのかということや、イザナミは比婆之山に葬られたのに、なんでイザナギは黄泉の国へ行くんじゃ?という疑問がありますよね。まず、そのあたりから考えて行きましょう。
- 1.黄泉の国(よみのくに)とは?
- 2.イザナギはなぜ黄泉の国へ行ったのか?
- 3.黄泉の国でイザナギが見たものは?
- 4.イザナギの必死の逃亡
- 5.史上最も壮絶な夫婦喧嘩の結末
- 6.今回のポイント
- 7.まとめ
1.黄泉の国(よみのくに)とは?
これまでは、神の住む世界である天上世界(高天原)とイザナギ・イザナミが生んだ地上世界がありましたが、あらたに黄泉の国が出て来ました。古事記には明確に書かれていないのですが、一般的な解釈では、この黄泉の国は地下にある死者の世界と考えられています。そして、地上世界と地下世界を結んでいるのが「黄泉比良坂(よもつひらさか」と言われています。
古事記は、この三つの世界を行ったり来たりすることで話が進んでいきますので、なんとなく頭に入れておいて下さい。
イメージではこんな感じです。
*地上世界を葦原中国(あしはらなかつくに)と言います。
*地下世界の黄泉の国と根之堅州国(ねのかたすくに)が同一か否か、解釈が分かれます。
この話はもう少しあとになります。
2.イザナギはなぜ黄泉の国へ行ったのか?
イザナミは比婆之山に葬られているのに、なぜイザナギは黄泉の国へ向かったのか。
古事記には明確に書いてありませんので、読む側が解読しなければなりません。私はこう考えました。
身体は死んでも、魂は永遠なのです。
遺体が葬られる ⇒ 魂が遺体から離脱する ⇒ 魂は黄泉の国へ行く
イザナギはこれを知っていたんですね。だから、黄泉比良坂を通って黄泉の国へ向かったのです。なんの根拠もない自説ですが、いかがでしょうか。
3.黄泉の国でイザナギが見たものは?
さてさて、黄泉の国に着いたイザナギは御殿の扉の前に立ちます。ピンポ~ン♪♪
すると門番の妖怪(ようかい)が扉を開けて顔を出します。
「なにかようかい?」(スミマセン、おやじギャグです m(_ _)m)
ナギ「おおーっ、愛しのナミちゃんよ、迎えに来たぜ! 一緒に帰るべ!!」
ナミ「遅いよ、とーちゃん。もうこの世界のご飯食べちゃったから帰れんよ。」
ナギ「そんなこと言わんと、なんとかならんけ?」
ナミ「そんじゃ黄泉の神様に相談してみっから。そのかわり、ここを動いちゃだめよ、
中をのぞいて私を見ちゃダメよ~、絶対ダメよ~。」
と言ってイザナミは扉を閉めて中に入ってしまいました。
はい、のぞくなと言われて、のぞかない男は200%いませんね。イザナミがなかなか出てこないので、イザナギは待ちきれず、御殿の中に入ってしまいました。中は真っ暗だったのでイザナギは左の髪に刺していた櫛の歯を一本折って、一つ火を灯しました。
すると、イザナギの目に飛び込んできたのは、腐敗した身体に雷神が成り出た変わり果てた姿のイザナミだったのです!!
イザナギはビビりまくって逃げ出します。「ギャー!!化け物だー!!」
イザナミは「見ーたーなぁー! 私に恥をかかせよって、許さへんでーーー!!」
といって、黄泉の国の恐ろしい醜女に後を追わせたのです。うーりゃー、待たんかい!
4.イザナギの必死の逃亡
イザナギは必死で逃げます。追いつかれそうになったので、髪に巻き付けていた蔓草(つるくさ)を投げました。すると、蔓が茂りブドウの実がなったのです。醜女がブドウにむしゃぶりついている隙にイザナギは逃げます。💨
しかし、ブドウを食い尽した醜女はさらに追ってきます。イザナギは右側の髪に刺していた櫛を醜女に投げつけました。すると、今度はタケノコが生えてきたのです。醜女はタケノコを次々と食べていきます。イザナギはこの隙に逃げます。🏃
今度は醜女だけでなく、千五百もの悪霊軍団も追ってきます。ウリャー!待たんかい! 待てと言われて待つヤツはいません。イザナギは腰に帯びていた十拳剣を抜いて後手(しりえで)に振りながら逃げます。これは相手を呪う行為なんですね。
ようやく黄泉比良坂までたどり着きます。ハーッ、ハーッ、ハー。息が苦しーい!!
ありゃ? そこで一本の桃の木を見つけました。そして、桃の実を三個取って投げつけると、あら不思議、悪霊達は逃げていったのです。どうなっちゃってんの?
もも-!古代から中国では、悪霊を祓う果物と言われています。
桃の実に助けられたイザナギは、桃の木にこう言います。「私を助けてくれたように葦原中国に住む青人草(あおひとくさ)が苦しむ時に助けてやってや!」
そして「意富加牟豆美命(おおかむずみのみこと)」という名前を与えたのです。
*ここで初めて葦原中国という名前と、そこに青人草(人間)が住んでいることがはっきりしました。
ここ、大事です。
5.史上最も壮絶な夫婦喧嘩の結末
悪霊達が逃げていき、ホッとしたのもつかの間、今度はなんとなんと、腐敗した身体を引きずってイザナミ自身が追ってきました。いよいよ最強ラスボスの登場です!
「恨み、晴らさで おくべきかーっ!」 恐いですねぇーーー!!はよ逃げや!
そこでイザナギは、千引の岩(ちびきのいわ 千人かかってやっと動くくらいの巨大な岩)を引っ張ってきて黄泉比良坂を塞いでしまいました。
千引の岩を挟んで、外側からイザナギが、内側からイザナミが対峙します。
ナミ「愛しい我が夫よ、あんたがこんなことすんなら、私はあんたの国に住む人間を
一日に千人殺したるでー!」
ナギ「愛しい我が妻よ、あんたがそうくるなら、私は一日千五百の産屋を建てるもんね
ー!」
こうして、この世では一日に必ず千人死に、千五百人生まれるのであります。
そして、イザナミは黄泉津大神(よもつおおかみ)と呼ばれるようになりました。
これにて一件落着ーーー! フーッ、やっとですね。
6.今回のポイント
①黄泉の国は死者が住む地下世界だ。
黄泉の国と地上世界(葦原中国)は、黄泉比良坂でつながっていた。
根之堅州国と同一かは解釈の分かれるところです。詳しくはもう少し
あとで。
②イザナミが黄泉の国から帰れないと言ったわけは?
この世界の食事をしてしまったということは、住人(?)になったと
いう意味があり、簡単には出られなくなったということ。
③葦原中国には青人草(人間)がいる。
イザナギが桃の木に言った言葉や、イザナミの千人殺しの言葉から
人間の存在が明らかになった。
④イザナギは千人力だった?
千引の岩を引っ張って来たのですから、誰が何と言おうと、千人力
でしょう。誰もなにも言ってない? 失礼しました・・・。
7.まとめ
さぁ、いかがでしたでしょうか。最後までお読みいただき、有り難うございます。
あれほど愛し合って国生み、神生みに励んできたイザナギ、イザナミがこんな別れ方をするとは意外でしたよね。特にイザナミは悲惨な状態でしたが、黄泉津大神と呼ばれたということから、黄泉の世界ではそこそこのポジションについたと思われることが、せめてもの救いでしょうか。
さぁ、話はますます佳境に入ってきましたよー!
次回は・・・・・。あの神様の登場です!
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