オオクニの国作りが終了し、葦原中国は平穏な日々が過ぎていました。ところが、これを高天原からじっと見ている神様がいたんですねぇ。誰あろう、天照大御神なんですね。天の岩屋戸を出てから何をしていたかは全く分かりませんが、何かを企んでいるようですよ。クワバラ、クワバラ・・・。
1.わがままアマテラスの登場
葦原中国を見つめていたアマテラスは、以前から密かに企てていた計画を実行に移します。これって見方によってはアマテラスの大いなるわがままです。
「豊葦原之千秋長五百秋之水穂國(とよあしはらのちあきのながいおあきのみずほのくに・葦原中国を装飾した言葉)は、我が子、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)が治めるべき国じゃ!
ええーっ、それって略奪するってこと!?
国の名前も、息子の名前もエライ長くて心が折れそう、覚えなくていいですよー!
この息子は、スサノオとの誓約で生まれたアマテラスの長男です。
アマテラスはオシホミミに言います。
「葦原中国は、お前が治めるんじゃ! 降臨する前に、ちょっと様子を見てこいや!」
オシホミミは、天の浮橋からそっと下界をのぞき込みます。そしてそして、青ざめた顔で帰ってきてアマテラスに言います。
「カァちゃん、なんか荒ぶる神がうじゃうじゃいて、僕ちゃん恐いよ~、ム~リ~!」
しゃあないなぁーと思ったアマテラスと高御産巣日神は、安の河原に八百万の神を集め、思金神に思案させます。
アマ「ええか、葦原中国は我が息子が治める国やねん。だけんど、この国には荒ぶる神
がうじゃうじゃおるんや。こいつらを説得させるには、誰を遣わしたらええか考え
てんか?」
2.葦原中国への使者(1)
思金神と八百万の神は感染症対策をして会議を開きます。なにしろ、八百万もいるので、ただでさえ3密状態ですから。
思金「こらーっ、3密はダメだと言ったでねぇか!ソーシャルディスタンスを保たねば
あかんよ、離れて座れよー。どうじゃ、誰か意見はあっか?」
神1「長男は気が弱いから無理だんべ。そしたら次男はどうじゃ?」
神2「次男かー、んだなー、悪くはねえけど、アイツはお調子もんじゃからなー。」
神3「そうそう、調子はいいけど交渉力はどうだんべなー。」
思金「まぁ、順番やけ、とりあえず次男に決めっぺ。」
ということで、次男の天菩比神(あめのほひのかみ)を遣わすべきと進言しました。
アマテラスは天菩比神を遣わします。だが、天菩比神はオオクニに媚びて本来の使命を果たさず、三年経っても復命しなかったのです。
3.葦原中国への使者(2)
アマテラスは、アメノホヒが三年経っても復命しなかったので、神々に尋ねます。
「アメノホヒはもう当てにできん、代わりに誰を遣わしたらええかのー?」
思金神は答えました。「天津国玉神(あまつくにたまのかみ)の子の天若日子(あめのわかひこ)を遣わしたらよかんべ。」
*天津国玉神は、天つ神の大地の魂を司る神様と言われますが、古事記に詳細は書かれていません。
アマテラスは、天之麻迦古弓(立派で光り輝く弓)と天之波波矢(羽の付いた矢)を天若日子に賜り、葦原中国に派遣しました。
しかし、天若日子はオオクニの娘の下光比売命(したてるひめのみこと)と結婚し、葦原中国を自分のものにしようと企むようになり、八年経っても復命しませんでした。
4.天若日子に天罰下る
アマ「なんでワカヒコは8年も帰ってこんのじゃ、どうすっぺ?」
思金「鳴女(なきめ)を遣わし、帰ってこない理由を聞いて来させましょう。」
鳴女とは雉子のことです。早速、ワカヒコの家に飛んでいきます。ケーーーーン!
鳴女はワカヒコの家の門の木に止まり、アマテラスの言葉を伝えます。
「ウリャー、おみゃーの役割はこの国の荒ぶる神どもを説得し、従わせることだぎゃ。
なんで八年も何の連絡もせんのじゃ、理由を言え、理由を!!」
これを聞いた天佐具売(あめのさぐめ・巫女)は、これを凶と判断し、鳴女を射殺するようワカヒコを扇動します。
ワカヒコはアマテラスから賜った弓矢で鳴女を射殺してしまったのです。そしてそして、鳴女の胸を貫通した矢が天高く飛んでいき、高天原に届いたのです。
高天原にいた高御産巣日神は、飛んできた血塗りの矢を見てビックリぽんです。
「なんじゃこりゃー!アマテラス様がワカヒコに授けた矢じゃないか!や~だぁ~。」
そして、神々にこう言ったのです。
「もし、ワカヒコに邪心があってこの矢を射たのであれば、ワカヒコめ、この矢に当たって死ねー!」
と言って、その矢を突き返して投げ下したのです。さぁ、どうなったでしょうか。
なんとその矢は、寝ていたワカヒコの胸にジャストミート!! マーくんも真っ青のコントロールで命中し、ワカヒコは死んでしまいました。天罰じゃー!
当然、鳴女は帰ってきませんでした。「雉子の頓使・きざしのひたづかい」ということわざの語源と言われています。「行ったきり帰ってこない使者」という意味です。
5.ワカヒコの葬式
ワカヒコの妻の下光比売命の泣声が風に乗って高天原にまで届きました。すると、父の天津国玉神やその妻子がこれを聞いて、葦原中国に降りてきて泣き悲しみ、喪屋を作り八日八夜にわたって葬式が行われました。
するとその時、オオクニの子の阿遅鉏高日子根神(あじすきたかひこねのかみ)が弔いのため天から降りてきました。これを見たワカヒコの父や妻がワカヒコ本人と見まちがえて、なんだ、生きていたのか、と泣きすがりました。どうやら、ワカヒコと容姿がそっくりだったようです。
ところが、死者と間違えられたタカヒコネは大いに怒り、十拳剣で喪屋を斬り、足で蹴飛ばして飛び去ってしまいました。その時、妹の下光比売命は兄の名を明かそうと歌を詠んだのです。ちょっとなに言ってんのか分かりませんね。
6.今回のポイント
①高天原から地上世界は見えたり、見えなかったりする?
国作りの完成とか、荒ぶる神がいるとかは見えているのに、遣わした面々が三年も八年も何やっているのか見えていないと言うことは整合性がありませんね。
②ここで時間の経過が初めて書かれている。
天菩比神が三年、天若日子が八年復命しなかったとありますね。そうなんです、ここで古事記は初めて時間の経過を書いているのです。但し、一年の概念が不明です。少なくとも、今のように365日ではないでしょう。
③なぜ天若日子が使者に選ばれたのか?
アマテラスは最初は自分の長男を降臨させようとし、それがだめだったので次男を使者として遣わしました。そして、次男も役目を果たさなかったため、次に選んだのは何の血縁もないワカヒコだったのです。その訳が分かりませんね。アマテラスには5人の息子がいますので、まだ3人残っているのにね。
④阿遅鉏高日子根神の話は意味がわかりません。
この話は必要でしょうか?よくよく考えても、なぜ古事記がこの話を書いたのか、意味が分かりませんね。たーだ葬式をぶち壊しただけですからね。
7.まとめ
さぁ、いかがでしたでしょうか。最後までお読みいただき、有り難うございます。
前述の通り、今回で初めて〇年という概念が出て来ました。それにしても合計で11年もアマテラスはじっと待ってたんでしょうか。あるときは瞬間湯沸器的であり、あるときは随分と我慢強かったり、なかなか複雑な性格のようです。
ところで、天菩比神は高天原に戻ってきたのでしょうか? 余計な心配?
さてさて、アマテラスの次なる手は・・・。次回です。
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